谷尻誠とは?
1974年 広島県生まれ
1994年 本兼建築設計事務所
1999年 HAL建築工房
2000年 建築設計事務所suppose design office 設立
2014年 SUPPOSE DESIGN OFFICE Co.,Ltd. 設立 共同主宰2001年- 穴吹デザイン専門学校非常勤講師
2011年- 広島女学院大学 客員教授
2012年-2016年 武蔵野美術大学 非常勤講師
2014年-2016年 昭和女子大学 非常勤講師
2015年- 大阪芸術大学准教授社食堂、絶景不動産、21世紀工務店、未来創作所、Bird bath & KIOSK、tecture、toha、DAICHI、yadoを経営https://suppose.jp/people/tanijiri-makoto/
谷尻誠さんは広島県で生まれ育ち、建築設計事務所での経験を経て、2000年に自らの建築設計事務所であるサポーズデザインオフィスを設立しました。
インテリアから住宅、商業空間、会場構成など多様な空間を創造し、日本全国や海外の多数のプロジェクトに携わっています。
柔軟な思考を持つ建築家であり、起業家としても活動の幅を広げ、社食堂やキャンプ事業など多くの法人を経営しています。
著書『CHANGE』や『1000%の建築』などは、独自の視点や働き方を示し、2021年には20周年記念書籍『美しいノイズ』が刊行され、多彩な活躍が伺えます。
House T
都市における洞窟のような場所
都市における洞窟のような場所
https://suppose.jp/works/house-t/
都市の中に住居でありながらも外部を閉じ
私的空間を確保しつつ
自然を感じる場所を創造した
コンクリートの箱を用い
光は開口部をできるだけ絞り
明るさと暗さのグラデーションを作る
夏は天井に配した冷水パイプから涼を得て
冬は床下に流した温水と
暖炉の火から暖をとる
さらには空間の気積を変化させることで
場が生まれ
それは以前からそこに建っていたかのような
洞窟のような場所となった
冷水パイプと温水で気温の調節された部屋って心地よさそう!
- 自宅敷地面積:175㎡
- 地階のテナント面積:100㎡
- 1階の自宅面積:100㎡
- 2階のテナント面積:50㎡
- 2階のテラス面積:50㎡
- 天井高:5mのコンクリートの箱型設計
- 地階は道路からフラットにアクセス可能な場所に配置

確かに他の住宅とは全く異なる表情をしている。。
自宅部分は構造上の仕切りが少ない、天井高5mのコンクリートの箱。現状は個室やロフトを設けているものの、全て取り払い広々としたワンルームとすることも可能。
↑House Tの内部の様子が動画で分かります。
カウンターキッチン

玄関を開けると、5.5mの広大なキッチンカウンターが目を引きます。
換気扇はカウンターに巧みに格納され、カウンター下の扉材には手作業で木目を浮かび上がらせる“うづくり仕上げ”が施されています。

なんとキッチンからは街並みが一望できる!
洞窟のような雰囲気を感じられますね。
リビング

リビングは洞窟や教会のお堂をイメージしたような独特な雰囲気があります。
窓はなく、スポットライトのみが照明として使われ、コンクリート壁の縦のラインが印象的。
ピエール・ジャンヌレが作ったビンテージのアームチェアなど、家具は壁面を生かすために低く抑えられ、材質から家具まで細やかなこだわりが感じられる空間で、落ち着いた心地よい時間を過ごすことができます。

奥行きのある設計で、リビングは薄暗く落ち着けるようになっているとか。
暗さがあることで夏でも不思議と涼しく感じられる効果もあるみたいです。
床
床材にスレート石を選んだ理由は、床の分断を避けて広く見せるため、安全性(目地の段差での怪我防止)と水周りでの汚れにくさを考慮したからだそうです。
一つ一つの建材の選定には合理的な理由があります。

外の空気を感じながら食事を楽しめるようにと、北側にテラスを設け、ダイニングと繋ぎ大きなテーブルでインドアとアウトドアのダイニングを選ぶことができます。デザイン面でもテラス内部と室内の壁に同じ型枠コンクリートを使用し、室内の床にバラバラの石タイルで屋外の雰囲気を再現。屋外の床は表情のある墨色のモルタルを用いて一体感を演出しています。
ベッドルーム
低い天井が特徴の寝室。書棚と机は造り付けで、棚板は厚めにデザイン。等間隔の天井の梁が連続感を演出。リビングとのギャップも高さのギャップ

洗面室、室内バスルーム、トイレ、クローゼット

洗面室、室内バスルーム、トイレ、クローゼットが連続するオープン空間。収納を充実させ、洗濯乾燥機はビルトイン。ウォークインクローゼットはホテルを手本に設計され、衣類が見渡せて便利。バスルームは室内と室外の2つで、黒くマットなタイルと亜鉛メッキ鋼板が落ち着いたカッコ良さを演出。ヴィンテージ色のアクセントが全体をすっきりとした印象に。
照明
サポーズデザインオフィスは、日本人の明るさ信仰に挑戦し、暗さを取り入れた空間設計を提案しています。
『House T』では、洞窟のような雰囲気で、コンクリートのラフなテクスチャーが際立っています。
照明器具を最小限に抑え、自然光を生かしながら必要な場所にだけ光を当てる工夫をしました。
暗がりから外の植物や暖炉の火を眺めることで、身体感覚を取り戻すことを提案しています。暗さによる心地良さと素材の豊かさが、心に余裕と落ち着きをもたらすと考えられています。
制作経緯
公式HPを要約すると、
東京の高い地価に困惑しつつも、自宅としての機能と賃貸収入を見据えた計画。洞窟のような環境を再現し、独自の空間を完成させていった。
といった感じですかね。
他には、こちらの記事でも語られています。https://hash-casa.com/2021/03/12/makototanijirihome/
生活動線
家の広い空間とプライベートな空間を回遊できるように設計。広い空間と小さな空間の連携でメリハリを生み、動線上に行き止まりがなく人の流れや空気がよどみなくながれています。玄関から寝室への回遊動線は家族のクローゼットとしても活用。
高低差
リビング、ダイニング、キッチンの目線が調和するように床に3段階の高低差を設けています。リビングが最も高く、ダイニングは30cm低く、キッチンはさらに20cm低いため、全体的に段差が50cm。段差部分は収納として利用され、間接照明で照度を調整しています。
掲載雑誌
GA HOUSES 172
住宅特集 2020年9月
住宅特集 2020年12月号
Casa BRUTUS 2021年2月号
MODERN LIVING 256号 2021年5月号
建築知識 2021年7月号
id+c magazine China No.320
IW Magazine No.139
谷尻誠さんの本から考え方を学ぼう
谷尻誠さんの著書についてはこちらにまとめています。

まとめ
谷尻誠さんの自邸「House T」は東京という土地に家を建てることの難しさと戦いながらも、試行錯誤し実現させていました。
素材の選び方にも合理的な理由があり、非常に勉強になりました。
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