18世紀フランスを代表する思想家ジャン=ジャック・ルソー。彼の思想は近代民主主義の源流となり、今なお多くの示唆に富んでいます。
ルソーの生涯
ルソーは1712年6月28日、スイスのジュネーヴで時計職人の子として生まれました。
幼くして母をなくし、10歳の時に父も失踪したため、従兄の家で育てられます。
その後、ジュネーヴで彫金師の徒弟となりますが、少年時代は不遇な生活を送っていました。1728年、ルソーは親方からの罰を逃れるためにジュネーヴを飛び出し、以後放浪の生活に入ります。
1732年、ルソーはフランソワーズ=ルイーズ・ド・ラ・トゥール・ド・ヴァランス夫人の庇護を受け、音楽や哲学を学び始めます。その後、1740年代にパリに出て、1750年に発表した『学問芸術論』が評価され、以降思想家として多くの著作を生み出します。代表作に『社会契約論』『人間不平等起源論』などがあります。
晩年は孤独を求めてパリ郊外に隠棲し、1778年にエルムノンヴィルで死去しました。生涯を通じて、ルソーは困難な状況に置かれながらも、独自の思想を確立していったのです。
ルソーの思想
ルソーは人間の文明化・社会化の過程で自然な幸福が失われ、不平等と堕落が生じたと考えました。『人間不平等起源論』では、文明以前の自然状態の人間は平等で幸福だったが、農耕の発達で私有財産が生まれ、不平等と支配が始まったと述べています。自然状態の人間は他者を認識せず、自由で平和な状態にあったとし、農業社会以降に理性的社会化が進み、不平等が広がったと主張したのです。
また、『社会契約論』では、個人が権利を社会にゆだねることで国家が成立し、一般意志に基づく統治がなされるべきだと説きました。これは近代民主主義の理論的基礎の一つとなりました。ルソーは直接民主制の可能性にも言及し、国民主権と代表制の関係について議論を展開しました。
ルソーの思想から学ぶこと
ルソーの思想からは、文明の発展には必ずしも幸福が伴わないこと、社会の在り方を根本から問い直すことの重要性を学ぶことができます。また、一人一人の尊厳を重視し、民主的な社会を実現することの難しさと意義を考えることができるのではないでしょうか。ルソーが厳しい環境下で培った独創的な思考力は、今なお色あせることなく輝きを放っています。ルソーの示した理想は私たちに思考の源泉を提供してくれており、現代社会の課題を考える上でも多くの示唆を与えてくれています。
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